夜明けのコーヒーを君と一緒に

【著者解説 2003/3/17】

一流会社に勤めているエリートは、まずは自分の一生が約束されているとおもい込みやすい。だが、途中、経営者の逆鱗に触れて、左遷、更迭されることも珍しくない。組織には必ず主流と反主流があり、盛者必衰のことわりにより驕る者も久しくない。組織の中の勢力関係は変わりやすく、絶対の権力を誇った者も、一 朝にして失脚することがある。大手新聞社の社主の逆鱗に触れた一介の新聞記者が、政治権力に対してほとんど勝算のない孤独な戦端を開く。個人と権力、あるいは組織との絶望的な戦いは、私の好んで描くところである。

これまで弱者対強者の戦いには、フィクションの中でしか勝ち目はなかったが、インターネットを手にした個人は、いまや世界に対して発信できるようになり、 隆車に歯向かう蟷螂にも勝算が生まれた。その分、小説の舞台が狭められたわけである。携帯電話とインターネットはミステリーの天敵であるが、これをどのよ うにして克服するかが、この作品の重要な課題となった。『レッドライト』にも同様の課題が課せられた。

実業之日本社
2002.9
*実業之日本社
2004.9
ハルキ文庫
2007.5

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。


←ひとつ前のページに戻る