憲法九条名言集14

森村誠一

憲法が自衛隊を護った。
憲法九条のおかげで、自衛隊創設以来ただの一人も隊員から戦死者がでないのである。


エンドレスピーク 森村誠一著より

日本は戦争の犠牲と反省を踏まえて、世界に例を見ない平和憲法を制定した。
平和憲法制定以前は、国家の独立と国民の安全を最終的に保障するものは軍であった。
だが、核兵器の出現によって、軍に最終的に頼っている限りは、人類の滅亡と地球の破滅に至ることを日本は逸速(いちはや)く気づいて、独立と安全の保障を軍に託する歴史的な考えに訣別(けつべつ)した。
戦争を永久に放棄(ほうき)することを宣言したものの、米ソ東西軍事対決の戦略的狭間(はざま)に立っている日本は、憲法に忠実に生きることは不可能であった。
そして日本は、米ソ二大軍事対決の構図の中で、米国の同盟国としてその傘の下に生きる選択をしたのである。
憲法違反の下の選択である。
ここにソ連が解体して、東西軍事対決は終わり、この選択の先見性が実証された形となった。
だが、核戦力の均衡(きんこう)のもとに保たれた見せかけの平和は、薄氷(はくひょう)の上にあった。

~ 中略 ~

戦力の均衡によって平和を維持しようとする限り、限りもない軍拡競争に並ばなければならない。
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、安全と生存を保持しようと決意した」日本は、軍拡のレースからおりた。
世界の諸国家が武装している前で、自ら最初に丸腰となったのである。
だが、これは見せかけであって、憲法違反の下、日本はアメリカの盟友として再軍備した。
最も効率のよい戦争は、先制攻撃である。アメリカの傘の下、専守防衛を旨(むね)としている日本の自衛隊は、最初から敗(ま)けることを想定している。
日本国民は必ず敗ける自衛隊によって手厚く護られている。再軍備するなら必勝(先制侵攻)の軍をつくらなければ意味がないところに専守防衛のまやかしがある。
自国の防衛を他国にゆだ委ね、偸安(とうあん)の夢に耽(ふけ)る日本は、一国独善の閉鎖列島と罵倒(ばとう)されている。
だが、独善でない国が世界のどこにあるか。アメリカにしても、日本のために日本を守っているわけではない。アメリカの不沈空母として戦略的価値の極めて高い日本列島を、アメリカのために守っているのである。
世界の反対を押し切ってのフランス、中国の核実験、イラン、北朝鮮の核開発も、一国の独善性を象徴している。
日本はこのような独善の諸国家を、平和を愛する公正と信義の諸国民と信頼して、自国の安全と生存を保持しようとしたのである。
それは人類の理念であり、現実からはほど遠い。
だが、その距離を埋めようとする努力こそが、世界で最初に核兵器の洗礼を浴びた日本の責務である。
日本の独善を罵(ののし)る者は、現実に理念を売り渡し、過去から永久に教訓を学ばない者である。
仮に日本を一国独善と譲(ゆず)ったとしても、ほかにどんな選択があったか。
もし日本が戦争を放棄せず、軍事大国化の道を歩んでいたなら、日本の安全と幸福、および世界の平和により大きく貢献していたであろうか。
日本の戦後の軌道(きどう)にさまざまな批判はあるとしても、結局、日本の選択がベストではなかったか。

~ 中略 ~

観念の遊戯にすぎない平和憲法の下での一国の独善的平和と罵られても、日本が選択した理念の憲法による平和への悲願は、犠牲者の霊の前にたたずむとき、正しい選択であったと言えるようにしなければならない。
理念は思索的な遊戯ではない。世界が武装している前で最初に丸腰になって(実際は丸腰ではないが)人類共通の理念の追求を高らかに宣言したことを忘れてはならない。


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