完全犯罪の座標

〈完全犯罪の座標/妖獣の債務/魔犬/風媒の死/盗めなかった“切り札”/致死鳥/断罪喫茶店/飼い主のない孤独/盗まれた密室〉

【著者解説 2003/4/8】

ミステリーのタイトルの定番であるが、完全犯罪とは言葉として矛盾がある。本来、法治社会において完全な行為であれば、犯罪とならないはずである。犯罪とは、辞書には「法律上、刑法その他の刑罰法規の規定により、刑罰を科される行為」と定義され、法律書においてはおおむね、「構成要件(罰条)に該当する違法かつ有責の行為」と記述されている。要するに、社会的に不完全な行為が犯罪であり、完全な行為は犯罪とならない。

ミステリーにおける完全犯罪は、
1、 犯罪があったにもかかわらず、あったことがわからない。
2、 犯罪があったかどうか不確定。
3、 犯罪があった事実は確かであるが、犯人が不明である。
4、 犯罪と犯人の存在は明らかであるが、証拠がつかめない。

以上四つのパターンに分かれる。数字が若いほど完全性が高い。ミステリー作家にとって完全犯罪は見果てぬ夢であるが、それだけに難しい。また絶対に破綻しない完全犯罪を描いても、犯罪小説にはなり得ても、ミステリーにはならない。完全性の高い犯罪がわずかなミスから崩壊する過程が、ミステリーの醍醐味でもある。拙作では本作以下、『完全犯罪の使者』、『完全犯罪のエチュード』、『花刑』中「完全犯罪の鏡像」などがある。

講談社
1976.6
*講談社
1977.12
講談社文庫
1980.2

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。


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