単位の情熱

〈単位の情熱/鳩の目/企業人非人/電話魔/無能の情熱/虚無の標的/病蝕会社/社員廃棄院/侵略夫人/殺意の造型〉

【著者解説 2002/9/5】

ホテルに勤めていたころ、千余室の客室を一班構成六名、四班のローテーションで担当していた。私は森村班の班長であった。勤務を終えて帰るとき、上司に次 班への引き継ぎを報告する。その際、上司は必ず次の出番は何人かと問うた。決してだれとだれが出るかとは聞かなかった。たとえば明日はフランスの団体が到 着するから、フランス語の堪能なA君を出せとか、スペイン語のB君に出るようにとは言わなかった。つまり、私たちを個人としての能力を持った人間としてで はなく、労働力の単位としてしか扱わなかった。私はいつもその悲哀と虚しさを噛みしめて退室した。後日、書く舞台をあたえられた私は、かつての労働力の単位としての悲哀を、この作品に凝縮した。

サンケイ新聞社出版局
1973.5
徳間文庫
1998.12

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。


←ひとつ前のページに戻る