ファミリー

【著者解説 2002/9/5】

男と女が出会って、子を産み、家族(ファミリー)を 繁殖する。たとえ結婚していなくとも、男女の間に子供が生まれれば家族である。家族にはそれぞれの事情がある。離婚して、家族が離ればなれに暮らすようになっても、家族であることには変わりない。一見、幸せそうな家族でも、なんらかの問題を抱えている。英語で家庭の秘密のことを、「戸棚の中の骸骨」というが、どこの家にも公にしたくない内部事情が一つや二つはある。ゴールデンウィークや夏休みには、行楽地は楽しげな家族連れで満員盛況となる。彼らの家庭に も戸棚に骸骨はないとしても、秘匿したい問題があるであろう。

夫婦二人の家庭というものもあるが、子供のいない家庭はどことなく虚しい。二人の絆は愛であっても、愛は移ろいやすい。愛があっても子供のいない夫婦は、 友達感覚のようなところがある。子供のある夫婦は離婚をしても、家族の関係は断ち切れないが、夫婦二人の家庭は離婚をすれば赤の他人に戻る。本来は他人同士を源流として、家族は発する。夫婦に、
「お子さんはいらっしゃいますか」
「お子さんは何人ですか」
などと安易に聞くものではない。子供を生む、産まぬも、また子供が何人いようと、それぞれの家庭の事情というものである。家庭の事情は当事者にとっては国や世界の事情に勝る。そんな事情をミステリーに組み込んだのが、この作品である。角川ホラー文庫のトップバッターである

角川ホラー文庫
1993.4
講談社
2007.4

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。


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