青春の雲表

社会に出る前
雲に近い山々を
山仲間と共に登った。
山旅は
少しでも雲に近づく。
そして、
これ以上は登れない山の頂上で
雲を見た。
これまで喘ぎながら
登り続けていた山頂から
まだ雲表につづいているような
まぼろしの梯子が見える。
雲表につづく梯子を
幻影と知ったとき
遠方に
青い影を立ち上げている遠い山を
次に登るべき山と
山仲間と約束した。
そんなとき
山脈を囲む
蒼く烟った外界の
見知らぬ町の
家の屋根が
きらりと光る。
白雲を染めた紫紺の空が
青い外界に連なり、
地平線や水平線に限られている彼方に
山頂に立っている私の
無数の出会いや可能性が
潜んでいるように見えた。


「永遠の詩情」より

山の写真集

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