法王庁の帽子

亡き妻の面影を求めて南仏を旅した式村隆一は、帰国後、旅先でよく出会った日本人カップルの男性が殺されたことを新聞で知った。さらに数日後、街で偶然片割れの女性が別の男性と車に乗っているところを目撃、なんと相手の男は、式村がアビニヨン法王庁でなくした帽子をかぶっていた!なぜ式村の帽子が見知らぬ男の頭に?殺人事件に絡むカップルの謎に迫ったとき、南仏と北アルプスを結ぶある恐るべき真相が浮かび上がった!プロバンスの陽光きらめく原風景に隠された殺意を描いた旅情あふれる表題作をはじめ、秀作六編を収録。

〈法王庁の帽子/捜査圏外殺人事件/魔光/余命殺人事件/重い枯葉/殺人の天敵〉

【著者解説 2002/8/27】

怪我の功名という言葉があるが、小さな損失(ダメージ)が大きな実を結ぶことがある。フランスのアビニョ ンへ旅行したとき、法王庁で帽子を失った。多年愛用していた帽子であったので、とても残念であった。せめて失った帽子を法王が被ってくれればと喪失感をなだめた。だが、そのときの体験がこの作品に実を結んだので、失われた帽子ももって瞑すべしである。

*光文社
2000.11

光文社文庫
2004.10

文春文庫
2009.8

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。