小説には鉄則がない。鉄則がないという鉄則もない。作家志望推定人口約500万人、だれが、どんな根拠で推定したのか不明であるが、作家志望者が多いことは確かである。
「作家になるための絶対的な傾向と対策」はないが、作家志望者はいつの日か、我が作品世界に多数の読者を招きたいという野望と、自分の才能に対する自信と 不安を持っている。自分の才能を認めてくれない世間は馬鹿だという壮大な自信と共に、もしかしたら自分はとんでもない勘ちがいをしているのではないかという不安が同居している。カルチャースクールや小説教室に通うのも、自分の不安をなだめるためである。また同好の士と切磋琢磨することによって、たがいにインスパイアし合う。小説を書くのはだれの力も借りない自分独りの作業であるが、外部(他人の作品や同好の士など)から刺激やヒントやパワーを受けることが 大いにある。小説を書き始めて40年、まだ前途遼遠であるが、生涯において運命の一作といえる作品を探し求めて放浪している。これは「自分の一作」を探し 求める放浪記である。
小学館
2007.10
*角川書店
(小説の書き方-小説道場・実践編)
2009.4
*角川書店
(作家とは何か-小説道場・総論)
2009.4
*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。