夢の虐殺

〈夢の虐殺/高燥の墳墓/派閥抗争殺人事件/侵略夫人/殺意の造型/人間溶解〉

【著者解説 2002/8/30】

私の学生時代、昭和30年代は北アルプスの黄金時代で、しきりに同山域に登った。当時は百名山は今日のようにブームではなく、好きな山に何度も集中して登った。ずいぶんあちこちの山に登ったようであるが、百名山を数えてみると30峰にも満たない。当時の山登りには文化が伴い、ベストセラーとなった井上靖の『氷壁』や、山岳小説、山岳写真、山岳画、山岳エッセイなどが花盛りであった。当持、共に登った山仲間も、いまは消息が絶えている人も多い。山は一つの登頂を果たすと、新たな山が次の約束を迫る。私が自作の山岳小説に青春の残映をおぼえるのは、登り残した山々から、まだ果たしていない約束を責められているような気がするからであろうか。当時の登山メモから、この作品集や、『死導標』などのヒントを得た。

角川文庫
1974.9
青樹社
1975.2
新潮文庫
1978.7
飛天文庫
1995.8

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

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