【著者解説 2002/8/16】
熱心な愛読者である大学教授と酒席を共にしたことがあった。初老の教授は、「あなたの作品の中で、『恋人関係』だけは許せない。50代の作家が20代の女子大生と恋愛をするなんて、そんなうまい話があってたまるか」と言った。教授は悔しげであり、羨ましそうでもあった。謹厳実直な教授がそんな表情をしたので、私は内心おかしかった。きっと教授は青春ど真ん中の女子大生に囲まれながら、彼女らを絵に描いた餅として眺めている自分と、『恋人関係』の主人公を比べていたのであろう。私はその教授に、より人間味をおぼえた。
*角川書店 1987.6 |
集英社 1988.12 |
角川文庫 1989.5 |
*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。