刺客の花道

【著者解説 2002/8/27】

『忠臣蔵』を完成した私は、その外伝のようなものを書きたいというおもいが次第に強くなってきた。『忠臣蔵』は日本人のだれでも知っている有名な実話であるが、この中にはエンターテインメントのすべての要素が揃っている。浅野と吉良、紅白にはっきりと別れた図式もわかりやすいが、なによりも元禄という時代相が面白い。

登場人物も政・財界をはじめ、角界の有名人から、色里、いまで言う風俗営業まで含めて多彩である。まさに百花繚乱(ひゃっかりょうらん)たる役者の揃い踏みの観がある。私は『忠臣蔵』と同時に、元禄という時代に魅(み)せられた。面白い時代には面白いドロップアウトもいる。

文藝春秋
1988.1
文春文庫
1991.1
講談社文庫
2005.11

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

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