【著者解説 2003/4/15】
ノーマルなサラリーマンの勤務は、会社へ出勤して、そこで決められた時間働く。だが、その勤務形態が崩れている。パソコンの普及によって、必ずしも出社す る必要がなく、自宅で仕事ができる。せいぜい週に1回出社して、打ち合せをすればよい。だが、まだ大多数の勤務形態はオフィスに縛りつけられている。
ところが、まったく出社せず、ただ外へ出てぶらぶらしている勤務形態があると聞いて、この作品の構想が生まれた。サラリーマンは会社に所属しているという 意識が精神の拠点になっている。これがまったく自由勤務で、時どき会社に報告に行くだけでよいということになれば、上司や部下や、同僚との人間関係もなくなり、会社への帰属意識も薄れてくる。たまに自分の会社に報告に行っても、組織構成が変化していたり、知った顔がまったくいなくなり、仕事のラインからも 完全に外されている。自由勤務はいかにも気楽でよいようだが、自分だけ会社から切り離されてしまったような不安が募ってくる。そんなサラリーマンが踏み込んだ悪魔の圏内を描いてみたいとおもった。この作品でも猫が活躍する。
実業之日本社 1988.12 |
*角川書店 1992.6 |
角川文庫 1993.1 |
光文社文庫 2000.8 |
中国語版 |
*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。