終着駅

【著者解説 2002/8/16】

『駅』を書いたとき、『終着駅』『終列車』というタイトルが私の頭に浮かんだ。元国鉄は駅を「列車を停めて、旅客・貨物を取り扱うために設けられたところ」と定義している。だが、私には人生を扱うところのように見える。そして終着駅と終列車には、人生が駅よりもさらに濃く煮つまっているようにおもえる。終着港や終着船という言葉はない。やはり旅情は船や飛行機よりも列車の方が濃い。旅情は人情や情緒につながる。だが、石川さゆりの「津軽海峡冬景色」を聴いたとき、船の旅情も悪くないとおもった。この歌も「窓は夜露に濡れて、北へ帰る旅人ひとり」の「北帰行」の延長線上である。私の作品中、最もテレビ化率が高いのも、旅客ではなく、人生を映像化しようとしているからであろう。

*光文社
1989.9
光文社文庫
1992.12
角川文庫
2002.3
集英社文庫
2007.9
中国語版
1996.6

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

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