老いのエチュード

誰にも確実にやってくる老い。その終点には、死という終止符が待っている。生き方が、人の数だけ異なっていても、結局は同じ行き先にたどりつく。あなたは、老いるに値する人生を生きることができるだろうか?その意味を模索し、その行方を見つめ直してみる。混迷の世紀末に生きる人々に贈る、励ましのメッセージ。

【著者解説 2003/317】

人間は生まれると同時に、神からそれぞれの寿命の日めくり暦をあたえられる。だれも自分にあたえられた日めくり暦の日数をあらかじめ知ることはできない。知ることができないからこそ、明日は死ぬかもしれない人生を能天気に生きてゆける。だが、年齢を重ねるつど、日めくり暦の残り枚数が少なくなっている気配がわかる。過ぎ来し方をしみじみと振り返り、人生の総決算に備えるようになる。

老人は一応60歳以上とされる。各企業の停年もおおむね60歳である。だが、平均寿命80歳に達するようになると、余生とも言えなくなる。停年前は人生の上半期、停年後は人生下半期と呼ぶべきであろう。上半期は会社や家族、つまり他人のために働いたが、後半期は仕事の責任や家族の扶養義務から解放されて、自分のために生きる時期とすべきであろう。現実にはなかなかそうは生きられないが、人生後半期において得た自由をどう生きるべきか。自分自身に問うてみた。

なお、この文集は角川春樹氏の保釈と同時に設立された角川春樹事務所初発の出版物として刊行された。本書の書名は角川春樹氏の命名である。これの後編に当たる文集が、『煌く誉生』である。

角川春樹事務所
1995.1

ハルキ文庫
1999.5

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

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