霧の中に響く、腐れ橋を渡る妖しい足音…。罪に戦く人間の脅えを映す表題作『枕に足音が聞える』をはじめ、家族の団欒に突如“寄生”した老婆の行動を覗く『連鎖寄生眷属』。暗黒の縦穴に落ちたサラリーマンを描いた『虫の土葬』。愛猫と愛犬を失った男と女の復讐劇の『魔犬』など、執着心の恐怖を感じる傑作ホラー短篇集。七つの恐い話。
〈殺意の造型/連鎖寄生眷属/魔犬/窓際の呪術/虫の土葬/妖獣の債務/枕に足音が聞える〉
【著者解説 2002/8/20】
夜、寝についてから、昼間は気にならなかったさまざまな音が立ち上がってくる。それらの音が気になって眠れなくなることがある。音源不明な一つの音を退治 すると、その音の背後に隠れていた別の音が立ち上がる。これを退治しても、またさらに別の音が、というふうにきりがなくなる。枕に耳をつけていると、さまざまな夜の音が地を伝い、風に乗って這い寄って来るようである。枕の音にじっと耳を澄ましている間に、この作品が生まれた。
角川文庫
1998.8
*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。