エネミイ

社員に裏切られ自殺した社長の娘、婚約者を理由なく殺害された青年、愛娘を暴走族に撥ねられた男、幼い娘を流れ弾で失った父―。4人の犯罪被害者が喫茶店で運命的に出会い、犯人への怨恨の念を確認し合った。一方、かつての加害者が次々と殺害される事件が発生。棟居・牛尾刑事は、一連の事件の背景に被害者の復讐があると突き止める。私情と法の間で正義とは何かを問いかける、圧倒的スケールの社会派サスペンスロマン。

【著者解説 2002/8/16】

『笹の墓標』と同じく、晩聲社社長、同町出身の和多田進氏に招ばれて、北海道・十勝の幕別町へ行ったとき、この作品のヒントを得た。これが縁になって、私は同町の名誉町民となった。和多田氏は、この町の発端は『アリババと40人の盗賊』のような泥棒が、盗品の隠し場所にしていたそうであるが、町史には書かれていないと話していたのが面白かった。

私には泥棒のアジトにされたことは、べつに不名誉ではなく、むしろ観光資源になるようにおもわれる。ちなみに、パークゴルフはこの町が発祥の地である。この町には北の図書館というスペース充分な図書館があり、私は寄贈された図書を、この図書館に委託している。私が死蔵しているよりも図書館に委託して、多数の読者に読まれる方が、寄贈者も喜ぶであろう。寄託図書は館内だけではなく、移動図書館に積まれて、道東の読者に広く貸し出している。幕別町とは一石何鳥もの出会いであった。

講談社
2000.9

*光文社
2003.3

講談社文庫
2004.3

光文社文庫
2011.12

KADOKAWA/角川書店
2016.2

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

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