【著者解説 2002/8/27】
会社は社員に給料を支払う代償として、労働力を含めて能力の提供を求める。だが、決してそれだけではない。会社は社員を人格的に管理する。反骨豊かな人間も、会社があたえてくれる栄養たっぷりな餌や手厚い保護に骨抜きにされて、社奴となる。会社に対して忠誠(ロイヤリティ)を誓わぬ社員は絶対に主流になれない。社長や社是(ポリシー)を中心に、求心力の強い会社ほど生産性が高い。生産性をささえるものは社奴である。
私自身、企業に働いて、社員は個人的な疑惑を抱いてはやっていられないことを学んだ。愛社精神とは個人としての人生の目的よりも、会社の目的を優先することである。会社の目的と個人の人生の目的はちがうはずであるが、社奴には個人の目的はない。あったとしても、会社の目的に完全に吸収されている。どんな民主主義国家においても、会社は例外なく全体主義的である。社奴から発して『社賊』、『社鬼』に連なった。
*講談社 1984.6 |
講談社文庫 1987.6 |
青樹社文庫 1996.1 |
廣済堂文庫 1989.2 |
ケイブンシャ文庫 2001.10 |
*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。