エンドレスピーク(上下)

日本の敗戦が決定的となった昭和二十年六月。槍ヶ岳での再会を誓った五人はそれぞれが懸命に時代と闘っていた。米軍語学兵は上陸後の沖縄で、中国人は七三一部隊の鉄格子の中で、そして日本人も…。八月十五日、ついに戦争が終結。歴史と運命に翻弄され続けた五人の若者は槍ヶ岳で再会し、五つの石は山頂に還るのか!?愛と友情、生きることの意味を問う森村文学の金字塔。

【著者解説 2002/8/16】

学生時代、盛んに山に登った。グループで登ったこともあれば、単独行もあった。山仲間は山から遠ざかった後も、独特の絆で結ばれている。ザイルで結ばれた 「バンド・オブ・クライマーズ」である。青春真っ盛りのときに登った山は、必ず共に登った山仲間の顔とオーバーラップしている。現在、没交渉になっていても、彼らもきっとその山と共に私をおもいだすにちがいない。

小説を書くようになってから、構想に詰まり、七転八倒しているとき、引出しの隅に転がっていた小さな石を見つけた。束の間、私はそんな石がなぜ引出しの隅に埋もれていたのか不審におもった。そして、それがある山頂の石であることをおもいだした。

四十数年前、山仲間四人で北アルプスの尖峰に立ったとき、記念のしるしとして山頂の石を一個ずつ持ち帰った。何年か、何十年かして、また社会のどこかで再会したとき、この石を持ち寄ろうと約束した。その約束は果たされぬまま現在に至り、いまでは消息の知れぬ友もいる。その石の由来をおもいだしたとき、この作品の構想は定まった。

角川春樹事務所(上)
1996.11

角川春樹事務所(下)
1996.11

*光文社(上)
1999.3

*光文社(下)
1999.3

ハルキ文庫(上)
2002.11

ハルキ文庫(下)
2002.11

光文社文庫(上)
2007.4

光文社文庫(下)
2007.4

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

著書

前の記事

ホームアウェイ
著書

次の記事

棟居刑事 悪の山