地果て海尽きるまで(上下)

「チンギス汗の覇道に終わりはない」―一一六二年秋、モンゴル高原で一人の男子が生を享けた。右手に血凝りを握り、“眼に火あり、顔に光あり”と言われる吉相を持っていた。後のチンギス汗である。十三歳で父を敵に殺された彼は、家族を守るために孤独な闘いをはじめる。幾多の苦難を乗り越え、遂にモンゴルを統一した彼の目に映ったものとは…。チンギス汗の壮大な夢と不屈の魂を格調高く謳い上げる、著者渾身の一大叙事詩。

【著者解説 2004/11/8】

(上巻)
モンゴルの一小部族から出て、史上最大の帝国を築いたチンギス汗、彼を突き動かした原動力はなんであったか。草原に羊を追うだけの遊牧の暮らしなら、羊五 十頭、馬二十頭もいればハッピーに生きていける。地果て、海尽きるまで壮大な野心を追った若き日のチンギス。テムジンの半生に、いまは失われたロマンの源流を探った。夢というものがあるとすれば、まさにチンギスの夢の体現こそ、青春の野望の典型であろう。青春の幻影をチンギスに託して、私の作品世界を展開してみた。

(下巻)
強大な宿敵を次々に倒して、巨大化するチンギスの下に人材は集まり、モンゴルは飽くことなく膨張していく。これは後進国が先進国を食う驚異の侵略であった。だが、あまりにも拡大した帝国は、内に後継者争いの芽を蓄え、発達しきった積乱雲のように分裂していく。心を後図に残しながら逝ったチンギスの後、帝国の蒼き狼たちが辿る興亡史は、日本をも巻き込み、瓦解の坂を転がり落ちる。大帝国の崩壊に伴う夥(おびただ)しい人間群像のドラマは、まさに歴史の緞帳(タペストリー)であり、歴史こそ小説の宝庫である観を改めて深めた。

角川春樹事務所(上)
2000.12

角川春樹事務所(下)
2000.12

*角川春樹事務所(上)
2003.12

*角川春樹事務所(下)
2003.12

ハルキ文庫(上)
2005.6

ハルキ文庫(下)
2005.6

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

著書

前の記事

法王庁の帽子
著書

次の記事

人間の剣 江戸編