虹の生涯(上下)

主君に仕えてただの一度も召し出されたことなく立ち腐れていくような引退お庭番。なんのための修行、忠誠の対象すら失いかけた最後の武士が、井伊大老の首級を奪い返し、天下に躍り出す。生まれるのが遅すぎたと嘆く前に、刀と槍の錆を落とし、弓を張り、滔々たる時代の潮流と近代兵器に立ち向かう。新選組の「影」として歴史の荒波の中に消えていった四人の生きようこそ、屈することを最後まで拒否した永遠の青春の狩人である。彼らにとって武士道とは死にざまではなく、生き方を探す道であった。

【著者解説 2004/11/8】

隠退した江戸城元御庭番和多田主膳は、家の内・外に居場所を失い、城の堀端に釣り糸を垂れるしか、することがなかった。そんなある日、井伊大老が暗殺された桜田門外の変に行き合わせて、彼の運命が一変した。将軍直々の内命を受けた主膳は、隠退御庭番仲間、梶野甚左衛門、倉地内記、古坂平四郎の三人を誘って、皇女和宮江戸降嫁護送の後、京へ赴き、新選組を助ける。

池田屋事件から大政奉還を経て、箱館戦争まで激動の時代を、一度は隠居した老人たちが、時流の最前線に身を挺して戦い、勝ち残り、そして生き残った。これは敗者(廃者)復活戦ではなく、老人が時代に挑戦し、戦い抜いた血湧き肉躍る冒険である。新選組は時代に逆行して戦ったが、この作品の主人公たちは、時間をさかのぼって戦った。老いを拒否し、彼らにとって歳を取ることは、勝ち残り、若返りであった。

この作品の主人公たちは、永遠の青春の狩人である。

新人物往来社(上)
2004.3

新人物往来社(下)
2004.3

*中央公論新社
2006.12

*中央公論新社
2006.12

中公文庫
2008.10

中公文庫
2008.10

祥伝社文庫
2018.12

祥伝社文庫
2018.12

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

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