私の初のエッセイ集である。エッセイが本になるなどとはおもってもいなかった私は、初出媒体を記録していなかった。「初出がないのは、エッセイの記録性にとって惜しいね」と、故中島河太郎氏がやんわりと言った。エッセイを甘く見ていたわけではなく、化粧を落とした素顔を外気にさらすような快さに、ついうっかり読者の目を忘れたのかもしれない。エッセイには小劇場の舞台のように、作者と読者が至近距離にある親しさのようなものがある。
なお、本書中に収載した「劣等生の自信」は『ロマンの切子細工』と重複している。また『ロマンの珊瑚細工(所収)』の「ただ1冊の本」は、『自由とロマンの共和国』と重複している。この場を借りて、読者に対して謹んでお詫び申し上げる。
講談社 1975.9 |
講談社文庫 1978.9 |
*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。