戦争へと突き進む時局に押され、憧れの女性への思慕も個人の夢も捨て去り、戦闘機乗りに身を投じた日米の若者たち。爆撃を受け火だるまになる空母、次々と飛び立つ戦闘機。はからずも同じ女性の影を追っていたとも知らずに、降旗とロバート、それぞれの想いがミッドウェイの空に交錯する……。太平洋戦争の分岐点となった激戦ミッドウェイ海戦に正面から取り組んだ、著者渾身の戦記小説。
【著者解説 2002/8/9】
太平洋戦争の分岐点とも言われるミッドウェイを、悲劇の青春ロマンとして構成したいという願いを以前からもっていた。当時の「オール読物」編集長・藤野健一氏は「週刊文春」に『カリスマの宴』を連載したとき以来の交際で、「オール読物」ではすでに『暗黒星団』、『死海の伏流』を担当してもらった。『死海の伏流』以来、中井勝編集長に引き継がれて、『ミッドウェイ』の連載が始まった。
連載に先立ち、海軍兵学校跡、江田島を取材した私は、構想が大きく脹らんだ。中井氏は戦記の自著を数冊持っており、貴重な示唆をもらった。機が熟し、そしてその時期を失すれば書けなくなるという見本がこの作品である。
文藝春秋
1991.6
文春文庫
1994.3
ハルキ文庫
(血と海の伝説)
1998.8
角川文庫
2000.12
講談社文庫
2014.7
*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。