人間の剣(上下)

ほつれた柄の組紐、錆びた鍔、剥げた鞘、しかし刀身は不気味なまでに冴えわたる―。この一振りの無銘剣は、携えた者に強烈な自信と気力を与え、刀身一閃、必ずや血煙が舞う。幕末、大老井伊直弼が斃れた桜田門では「臆病者」と侮られた小河原秀之丞の手にあり、奮迅の活躍を…。続く坂下門外の変では、単身江戸城から斬り込んだ小姓名取克之助の血刀となる。さらに妖剣は、勤皇佐幕の血風吹き荒ぶ京の都は新選組の隊士に渡り…。人から人へと流転の無銘剣は、それを手にする者に数奇の運命を与え続ける。動乱の幕末を舞台に、歴史小説に新境地を拓いた森村誠一、渾身の力作。

【著者解説 2002/8/9】

「週刊宝石」から幕末を舞台にした剣豪ものを書いてくれという声がかかった。私は「異型シリーズ」で転々と所有者を替えた拳銃を無銘の剣に替えて、これを案内役として過去から現在に向かって漂流しながら、歴史のドラマを緞帳のように編みたいという想いをあたためていた。

編集部の賛同を得て始まったこのシリーズは、桜田門外の変から発して、日航機墜落事故の御巣鷹山までをたどる。後に「週刊読売」に引き継がれ、桶狭間の戦いから戦国期、江戸期を経て、桜田門外へとつなぎ、無銘剣を杖にした約440年の長い旅が完成した。「週刊宝石」、「週刊読売」両誌ともいまはない。

光文社(上)
1991.9

光文社(下)
1991.9

*光文社(上)
1993.11

*光文社(下)
1993.11

光文社文庫
(人間の剣幕末維新編・上)
1997.1

光文社文庫
(人間の剣幕末維新編・下)
1997.1

中公文庫
2004.6

中公文庫
2004.7

中公文庫
2004.8

中公文庫
2004.9

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

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