誇りある被害者

櫛田と清子は、お互い結婚を求めない体だけの大人の関係を続けていた。だが櫛田は、次第に清子に愛情を感じ、真剣な交際を望むようになっていった。そんな時、突然清子と連絡が取れなくなってしまった。櫛田が部屋を訪ねていくと、清子の絞殺死体が!?櫛田は警察とは別に、清子の過去を追いはじめるが…!?偶然によって織り成された殺人事件が複雑に重なる、社会派・恋愛ミステリ。

【著者解説 2002/8/27】

人間は誇りのために自らの不利益や危険を選ぶことがある。誇りがなければ死なずにすんだものを、誇りに固執して死を選ぶ。

「武士道とは死ぬことと見つけたり」の『葉隠』の精神に限らず、ごく一般の市民も誇りのために死ぬことができる。警察官や消防隊員や自衛隊員は国民と国家の安全のために身を挺する。彼らを支えるものは使命感であろう。誇りと使命感は微妙に異なる。一般市民の職業には、警察官や消防隊員のような強い使命感は必ずしも要求されない。使命感に殉ずる必要のない市民が、誇りのために死ぬとはどういうこと場合であろうか。そこを追求している間に、この作品ができ上 がった。

*光文社
1992.12

光文社文庫
1996.5

角川文庫
2004.7

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

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