棟居刑事の悪の器

梅雨明け迫る豪雨の夜、都内で轢き逃げと女性の絞殺事件が発生した。手がかりが少なく暗礁に乗り上げた捜査陣に追い打ちをかけたのは、近くの新興宗教の元本部施設で絞殺死体が発見されたとの情報だった―。3つの事件を結ぶ見えない糸を手繰るほどに、人間の欲望のすべてを包む巨大な器・東京の構造悪が浮かび上がる。悪の狩人・棟居刑事は、いかにして「悪の器」を踏まえて笑う犯人を追い詰めるのか? 傑作長編。

【著者解説 2004/11/8】

東京はあらゆるものを入れる巨大な器である。だれでも入れるが、根を下ろすのは難しい。そこに蝟集(いしゅう)するほとんどの人間は未知の他人であり、敵性とみた方が無難である。だが、東京には無数の出会いとチャンスがあり、それに伴う危険がある。東京に憧れる者はチャンスだけを見つめて、危険を忘れる。

きらめくイルミネーションの底に潜む危険に捕まった若者の愛と死。東京は悪がいっぱい詰まった器であると同時に、人間を惹きつけてやまない魅力がある。それはミステリーのためにあるような器であり、ここに森村ミステリーワールドを盛りつけてみた。

双葉社
2000.4

*双葉社
2002.7

双葉文庫
2003.12

角川文庫
2011.9

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

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