悪の条件

警視庁捜査一課刑事・山科正人は殺人事件の捜査本部に参加しているが、仲間にもペアを組んだ新宿署の牛尾刑事にも「話したくない秘密」があった。あることをきっかけに山科は誰にも決して「話せない秘密」をもつに至る。そのとき「悪の本性」に目覚めたことを自覚した山科は、追う者の心理を熟知した追われる者となった。

【著者解説 2004/11/8】

警察小説の魅力は、正義感と使命感に溢れた刑事や警察官のキャラクターにある。最近、世間の批判を集めている北海道警察や、各県警の裏金をめぐる腐敗は、警察小説の魅力を大きく損なう。

だが、私は警察官僚と現場の警察官は異なる人種だとおもっている。裏金づくりに中心的な役割を果たしていたのは、おおむね警察官僚であり、現場の警察官は蚊帳の外である。警察は社会悪と闘い、犯罪を予防し、個人の生命、身体、および財産の保護に任ずることを使命としているので、悪に隣接し、汚染され、悪に取り込まれやすい体質を持っている。

この作品では、悪の要素を自分の中に潜在体質として秘めている一人の警察官が、次第に心身共に悪に侵され、破壊されていく。ラストステージにおいて、警察官の魂と、悪の本能との凄絶な戦いを通して、棟居刑事や牛尾刑事が巧緻に組み立てられた完全犯罪のあくなき追及を描いた。

双葉社
2004.3

双葉社
2006.7

双葉文庫
2008.1

光文社文庫
2016.7

*は新書サイズ、()内は別題名、複数作品収録の場合ならびに長編選集は〈 〉に内容を示した。◇は再編集本など。

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