未発表作品

32、わたくしの冷たいこの手あたためてくれるというの?すべてを捨てて 2004/02/20
33、秒針よ今すぐ止まれいま止まれ あなたが生きている瞬間に 2004/02/21
34、奪われたくちびるほのか色めいてあなたの胸のぬくもりを知る 2004/02/24
35、終電の窓に映った君の顔想い描いて名を呼んでみる
36、来世の結婚ちかう私たち見守っているおぼろの月夜
37、身を寄せてあなたの肩にほほ寄せる分かつ温もり春の月影
38、運命と思える出逢いあなたとのこの一瞬を大事に生きる
40、冬朝日差し込む部屋のその中にあなたの気配まだ残ってる 2004/02/25
41、捕らわれた人魚のようにわたくしはもうあなたから離れられない
42、空を飛ぶ二人の想い星になれいついつまでも輝くように
43、この身には片乳房しかないけれど私は恋する一輪の薔薇 2004/02/26
44、逢えぬ夫(つま)思い浮かべてお祈りをするこの朝に白梅は咲く 2004/02/27
45、春の風まだ冷たくて君と手をとる愛しさよ並木の小道
46、美しい君の心は桜花ずっと一緒に生きていこうね
48、春の陽のようなあなたの微笑が命の意味を教えてくれる
50、余命など信じたくない来年もこの白梅をともにみましょう 2004/02/29
51、君からの文に「苺大福かったよ」と春のひかりの笑みがこぼれる
52、あなたから贈られたバラ満開で逢えぬためいき緋色に染まる
53、死なないで大切なひといつの日か涙の雨は虹に変われよ 2004/03/01
54、お互いの指を温めあうふたりそっと見守る雛の人形
55、「天国へ行っても一緒」と云う君に春雨いつか涙に変わる
56、恋人よお願いだから死なないでいつかふたりで海を見ようね
57、好きだよと抱き締められて転移したがんの痛みも忘れてしまう
59、泣きじゃくる私をそっと抱きしめて困ったように見つめるあなた
60、湯かんするときに私の長い髪だれが洗ってくれるのだろう 2004/03/02
61、今朝ひとつつぼみの薔薇が咲きましたくちづけされてはにかむように
62、わたくしは春の日の猫まどろんであなたのひざで眠りに落ちる
63、柔らかな桜の花にうもれてくようにあなたの愛にうもれる
64、君の肌その温もりの残ってるコートをかけてくれた春の夜
65、「愛しくて食べちゃいたい」と言う君に私のすべてさしあげましょう
66、痛み止め常用してること隠し今日もあなたに笑顔の便り
67、ひな祭りあなたがくれた菜の花を飾れば部屋に春おとずれる 2004/03/03
68、来年もまた逢うことを約束し雛人形を木箱にしまう
69、思い出が美しいほど悲しいと泣くわたくしをなだめるあなた 2004/03/04
70、潮騒のようなあなたの鼓動きく確かな命ここに流れる
71、もう一度わたしを抱いてほしいのとなくした乳房の声が聴こえる
72、死を待っている鶴一羽舞い踊る雪はしんしんしんしんと降る 2004/03/05
73、痛む腕さすってくれる君がいてはじめて命の尊さを知る 2004/03/06
74、夜中でも離れていてもひとりでもいつもいつでも一緒にいようね
75、やすらかにお休みという君がいていつも私を守ってくれる

77、お互いに大事に思うこの気持ち天に届けてねえツバメさん
78、夜の闇の痛みという名の魔物たち君の名前を叫び目覚める 2004/03/07
79、西風が届けてくれた愛情に包まれ薔薇はいまほころびる
80、苦しい日「闇には弥勒菩薩もいる」という君の言葉を心にとめる 2004/03/08
82、食欲のない日は君から贈られた果実を食べて夕食とする
83、死なないでお願いだから死なないで祈るのはただ君のことだけ
85、光差す窓辺に白い小鳥来て君のことづて伝えてくれる
86、風吹けば森のこずえに葉擦れして並んで語る(死ぬということ) 2004/03/13
87、死について語る二人を包みこむ眩しい日差し春のそよ風
88、恋しくてホワイトデーのお返しの花のつぼみに想い伝える 2004/03/14
89、わたくしに羽があるなら今すぐにあなたのものへ飛んでいけるのに
90、木の幹に水面のひかり反射して二人の恋の音色かなでる
91、永遠の命の桜かぎられた刹那を生きるあなたと私
92、夜の風に白モクレンの花灯り二人の恋のゆくえをしめす 2004/03/16
94、少年のような心をもつ君は風に吹かれて海をみている
95、春雨がふたりの肩に降りかかる誰も知らない国へ行きたい
97、寂しいのふたりでいてもさびしいの死が近づいてくるだから助けて 2004/03/20
99、痛む身をさすってくれる恋人の指の温もり永久(とわ)に忘れぬ 2004/03/21
101、逢うたびに花を贈ってくれる君 花の命は私のいのち 2004/03/24
102、荒れ狂う気持ちの夜に君からの便りは遠い灯台となる 2004/03/25
103、はたを織る姿をどうか見ないでねずっと一緒にいたいのだから
106、私たちふたりにとって一年(ひととせ)の桜でしょうか月のひかりよ
108、大切なひとよ私はいつだってあなたの心のそばにいるから 2004/03/31
109、夕暮れて君の心に降っている雨は私のこころにも降る
110、わたくしのリストカットの傷跡を優しく指でなぞる恋人
111、潮風があなたの髪をなびかせる海を見ている横顔が好き 2004/04/01
112、湖畔にて君と手をとり見る夕陽ふと入水(じゅすい)する幻想いだく 2004/04/06
113、どんぐりの樹が好きというあなたから雑木林の風は吹き来る
114、心中をしてどちらかが残ったら耐えられないねと月を見ている
115、再発のがん痛む夜は繰り返し心の中で君の名を呼ぶ
116、本当は抱いてほしいのこの海のカモメのような自由がほしい 2004/04/08
117、手を握り共に長生きしようねと言えば涙でかすむ満月
118、外出のできぬ私に君からの絵手紙だけが季節を告げる
119、夢で逢う約束をして床につく痛みを消せる魔法がほしい
120、春の音なんだと思うと問われれば花咲く音と答える私
121、私たちつがいの鳥になっていく黄泉(よみ)の国へと誘(いざな)う桜
122、死ぬことは怖くはないわそれよりもあなたを失うことが怖いの
123、来年も必ず花を咲かせますあなたがくれた紅胡蝶蘭
125、カーネーションわたしのためにあのひとが届けてくれた優しい香り

126、少年の頃に還ってゆくあなた少女の私が扉を開ける 2004/04/11
127、あなたからもらった花束眺めつつ祈る思いで連絡を待つ
128、新緑の季節に麻のジャケットを着こなす君がまぶしくみえる
129、春風が生命(いのち)の匂い運びくるそういう君を詩人と思う 2004/04/12
130、わたくしのために絵を描く君の手に四十色のパステル光る
131、ふたりきり あなたの恋愛遍歴は聞きたくないのわたくしを見て
132 私たち明日死ぬかもしれません これは命を賭けた恋です 2004/04/13
133、転移した痛みをおして君のため鏡にむかい口紅をひく 2004/04/14
135、痛みゆえ子どものように泣きじゃくる私をすぐに抱きしめに来て
136、病気の木げんきになってと祈りますあなたの姿かさねて見つつ 2004/04/15
137、木苺の白い花びら風に舞う実を結ぶ日を夢みるように 2004/04/16
138、少年のような瞳でわたくしの夢をみたこと報告する君 2004/04/17
139、私たち手をとりあって青い鳥さがしにゆくわ未知の国へと 2004/04/18
140、ひとりきりカモミールティー飲みながらあなたの肌のぬくもり想う
141、恋人は私と同じ病いです三色すみれ雨に濡れてる
142、お見舞いの林檎にひたい押しあててがんの痛みに耐える明け方 2004/04/20
143、君からの絵手紙のなか湖は夕陽にそまる 永久の約束
144、今夜からそちらのベッドで眠りますあなたの部屋の写真ながめる
145、目が覚めて君の写真にキスをする病気の治癒をただ祈りつつ 2004/04/22
146、眠れないあなたをそっと抱きましょうドイツ・リートをくちずさみつつ
147、花の絵を描くあなたの横顔を死ぬまでずっと見つめていたい
148、花園に蝶のつがいは舞い上がるわたくしたちの来世でしょうか
149、春が来てパステル増やす君がいるそれは命の彩りのよう 2004/04/23
150、風吹いて藤の花房ゆらすとき二人を祝福する鐘が鳴る 2004/04/26
151、真夜中に流した涙の雫だけ藤はある朝むらさきに咲く
152、藤の花ゆらゆら風に戯れる恋人たちを見守りながら
153、藤咲いて静かな雨が降ってきてあなたとわたし肌身を寄せる 2004/04/27
154、なぜふたり恋に落ちたのそのわけを探す旅路に咲く藤の花
155、プレゼントされた紅引くわたくしの鼓動を君にいま届けたい
156、どうなるの君が死んだらどうなるの私はひとりぼっちになってしまうの 2004/04/30
157、永遠に消えることないキスマークつけてほしいの生きた証に 2004/05/8
158、五月雨(さみだれ)に君を想えばひっそりとミヤコワスレは花ほころばす
159、娶(めと)られて君と一緒に暮らしたいされど叶わぬ淡い夢です 2004/05/10
161、いつまでも時を忘れて抱(いだ)きあう二人を包む新緑の風
163、音のない静かな部屋で仰臥(ぎょうが)する窓の外にはきらめく緑
164、ガラス器にビー玉しいて水入れて花を浮かべる君とふたりで 2004/05/16
165、わたくしは明日死んでもいいのです君にささげるカモミールの花
169、五月雨に痛い苦しいモルヒネを飲んで私は繭(まゆ)の中です 2004/05/24
170、箱につめ私の気持ち贈ります口紅色のリボンで結び 2004/06/05
171、治らない病いのために神様はふたりを結びつけたのでしょう 2004/06/07
173、来世も共に生きると誓いつつグラスの水に花を浮かべる 2004/06/13
174、あのひとがくれたピンクの花束が風に揺れます便りのように 2004/06/14
174、あのひとの薔薇の花たば魂のことづてのよう揺れております

魂の切影写真集

第四歌集「愛と死の歌」
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従軍看護婦のために辞世の短歌未発表作品