第四歌集「愛と死の歌」 – 第二回

23、花々が光をはなちはじめる日蝶まどうよに恋が生まれる
24、わたくしに足りないものは感謝です全ての人にごめんなさいを
25、一粒の葡萄を母は口含むもっともっと愛してあげたい
26、ピアニズム高音低音かけあいの中に芽生える恋の予感が
27、激しさに水と炎があるようにすべてが私を呑みこんでゆく
28、生きること死ぬことすべて恐ろしい萩のつぼみは風に揺れてる
29、春雨は桜の精の涙ですこの世に生まれてきた悲しみの
30、「いかないで!」叫んで目覚めることがあるもう悲しみは繰り返えさない
31、夏の日に迷い込みたる蝶がいて野辺に戻せるふいの寂しさ
32、わたくしは宮田美乃里になるためにこの世に生を受けたのでしょう
33、人生に悲しみばかり広がって涙の雨に虹がかかるよ
34、潮騒が優しく聴こえてくるような赤い珊瑚のネックレスする
35、鳴かないで 私が苦しみもだえる日カラスの声があちらからする
36、午後になりしぼんでしまった朝顔の紅(くれない)ひとつそっと手にとる

魂の切影写真集

第四歌集「愛と死の歌」
第一回第二回第三回第四回第五回第六回第七回第八回
従軍看護婦のために辞世の短歌未発表作品